Bank of Japan · Simulation
就任にあたって
あなたはこれから10年間、日本銀行総裁を務める。物価は下がり続け、
人々の頭には「モノの値段は上がらない」という予想が染みついている。名目金利はもう0%近い。
任期を始める前に、10年間の金融政策の枠組みを、
いま、ここで決めなければならない。これは市場と国民に対する、あなたの姿勢の表明である。
10年間の枠組みを選ぶ
Path A ── コミット
約束で縛る
就任の場で「2%が見えるまで緩和を続ける」と宣言し、10年間その約束に自らを縛る。
市場と国民に強い姿勢を示し、人々の予想(期待インフレ)に働きかける。
強み:約束を守り続けるほど信認が高まり、予想を動かす力が増す。
リスク:目標(物価2%手前)に届かないうちに引き締めれば「約束破棄」。信認が崩れ、デフレ予想が定着する。
Path B ── 柔軟
柔軟に構える
約束はしない。毎年の経済状況を見て、その都度、緩和も引き締めも自由に判断する。
手を縛らず、状況の変化に機動的に対応する。
強み:いつ引き締めても「破棄」のペナルティはない。判断は常に自由。
弱み:約束による期待への働きかけができない。人々のデフレ予想を動かす強力な手段を、自ら手放す。
⚠
この選択は取り消せない。一度枠組みを提出すると、任期の10年間、途中で変更することはできない。
現実の中央銀行も、一度示した姿勢を軽々には翻せない。約束の重みは「簡単には撤回できない」ことにこそある。
よく考えて選ぶこと。
Bank of Japan · Simulation
デフレ脱出あなたは日本銀行総裁。10年でデフレを終わらせられるか。
物価は下がり続け、人々の頭には「モノの値段は上がらない」という予想が染みついている。
名目金利はもう0%近い。金利を下げるだけでは足りない。買いオペ・売りオペ、マイナス金利、
そして一度掲げた「約束」で人々の予想に働きかけながら、物価上昇率を年2%へ導け。
経済の状態 / 第1年
第1年第10年
物価上昇率 π
期待インフレ πe
目標 2%
信認
0.50
約束を守るほど高まり、目標未達で破ると失われる。信認が低いと「約束」で予想を動かせない。
銀行の貸出余力
良好
マイナス金利を続けると、銀行の利ざやが細り、貸出余力が少しずつ損なわれていく。
今年の政策
あなたは就任時に約束した:「2%が見えるまで緩和を続ける」。この約束に10年間縛られている。
いま引き締め(売りオペ)に振ると、物価が2%手前(1.5%)に届いていなければ約束破棄。
届いていれば正常化として正当に卒業できる。
オペレーション
中立
◀ 売りオペ(引き締め)中立買いオペ(緩和)▶
スライド1目盛り = 政策金利 0.25%。金利が0%で止まった後も、買いオペを続ければ量的緩和になる。
マイナス金利 オフ
超過準備に手数料。金利を計算上さらに0.1%下げる。ただし長く続けると貸出余力を蝕む。
10年の記録 ── 総括
任期終了
–
答え合わせ ── 現実の日本銀行
日本の政策金利は1999年にほぼ0%に達した。だが物価上昇率2%が「持続的・安定的に見通せる」と
日銀が判断したのは2024年3月。ゼロ金利から四半世紀かかった。
米国はリーマン後のゼロ金利からの脱出に約7年、それでも成功例とされる。
デフレ脱却は、うまくやっても十年単位の仕事だ。
2000年と2006年、日銀は景気回復の兆しを見て利上げに動いた。だが物価が2%に達しないうちの
引き締めで、直後にITバブル崩壊・リーマン危機が重なり、いずれもゼロ金利へ逆戻り。
「早すぎた引き締め」は日銀はデフレ脱却に本気ではないという予想を
人々に植えつけた、との指摘がある。このゲームで未達のまま引き締めると信認が崩れたのは、これを映している。
2013年からの異次元緩和は量と「約束」で予想を動かそうとし、2016年にはマイナス金利を導入して
2024年まで8年間続けた。マイナス金利が銀行の貸出を細らせたかは
実証的に決着していないが、長期化への懸念は根強い。日銀自身の多角的レビュー(2024年)も、
非伝統的手段の効果を「不確実」と総括している。
そもそも2%が実現したのは、2022年以降の輸入物価高と2024年の大幅賃上げだった。
期待への働きかけが効いたのか、別の要因で物価が上がったのか、専門家でも決着していない。
「緩和を続ければ必ず脱却できる」も「金融政策では何も変えられない」も、どちらも単純すぎる。